札幌高等裁判所 昭和27年(く)2号 決定 1952年2月07日
抗告人 斎藤有一
主文
本件抗告は之を棄却する。
理由
本件抗告理由の要旨は原決定は抗告人に対する保釈の条件として保証金七万円としているが事件の性質、抗告人の財産状態、同種被告事件についての他の裁判所の保釈保証金額との比較等諸般の事情から見て不当に高きに失するものがある、よつて原決定を取消し更に相当の裁判を求むるため本抗告に及んだと謂うにある。
しかし刑事訴訟法第四百二十九条に依れば簡易裁判所の裁判官が為した保釈に関する裁判に不服がある者は管轄地方裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができると規定され裁判所がなした決定に対する不服申立である抗告に準ずる一種の救済方法(準抗告)がみとめられ又同法第四百三十一条に依れば右請求をするには請求書を管轄裁判所に差し出さなければならないと規定されている。しかして前者に所謂管轄地方裁判所とは当該簡易裁判所を管轄する地方裁判所後者に所謂管轄裁判所とは準抗告事件を管轄する裁判所の意とそれぞれ解すべきところ一件記録によれば本件保釈許可決定は第一回の公判期日前に於ける勾留に関する処分として岩見沢簡易裁判所の裁判官が為したものであることが認められるから抗告人としては右決定に不服ある場合は前説示に照らし準抗告として当該管轄地方裁判所たる札幌地方裁判所岩見沢支部に対し之が取消又は変更を請求すべく且つ同支部にその請求書を差し出すべき筋合である。従つて札幌高等裁判所に為した本件抗告の手続は右規定に違反すること明白であるから刑事訴訟法第四百二十六条に依り実体の判断を俟つ迄もなく之を棄却すべきである。
よつて主文の如く決定した。
(裁判長判事 黒田俊一 判事 羽生田利朝 判事 長友文士)